Language:
2019年度 シラバス情報表示画面 (R25501)
■科目名
公共経済学 (4単位)
公共経済論 (4単位) [ECON345]
■教員名
長谷部 秀孝 (ハセベ ヒデタカ)
科目名の後ろに水色で表示しているものは科目ナンバリングです
■開講期 秋期
■テーマ
実際の社会を考えよう
■授業概要
 日常生活においてどのようにしたら幸福が追求できるか考えることにする。そのためには国や地方自治体の活動について考えなければならない。国民の立場からはいかにして社会貢献しなければならないか自覚しなければならないが、それをいかにしてサポートするかが財政の目的なのである。
 しかし、現実の問題を考える際には、理論的に物事を考えなければならない。社会で起こる様々な問題をミクロ経済学の手法を用いて考えることを目指す。最終的にどのような政策が最適であるかを理論的に考えることにする。
 昨年度に習った「ミクロ経済学」や前期に行われた「ミクロ経済学中級」、同時に行われている「財政学」は社会で発生する問題を考えるBaseである。そこで触れられた考え方を、実際社会で起こっている問題に応用する。つまり、応用経済学である。ただし、財政学とは違い、できるだけミクロ経済理論を前面に出して、問題を分析していく。つまり公共経済論は、「財政学」と「ミクロ経済学」が入り交じった学問である。
 公務員試験を受ける人は必修である。知識を広げるためにも、できるだけ本を読んで欲しい。
■到達目標
 この授業を受けることでのポイントは、知識の幅を広げる、問題発見、問題解決、論理性、応用性ということになる。これがある程度達成できればB評価となる。
①論理的思考(応用):市場における経済活動が原則であるが、市場がうまくいかない場合に政府が介入する
  →これまでやってきたミクロ経済学、マクロ経済学、ミクロ経済学中級との   関連
②問題発見(知識):私達の身近なところでの毎日のように問題が起きている
  →社会において実際に起こっている問題(それを時事問題と言う)の分析・検   討
③問題解決(政策):問題が発生したような場合に、どの様な政策を行うことが必要なのかを考える
  →公共経済論は政策論が中心をなす
このような目標を実現するためには、予習が重要である。パワーポイントの動画を用意しているので、それを見て準備をしておくこと。
■共通科目または各学部ラーニング・アウトカムズとの関係
経済学を用いて、社会現象を複眼的視点から論理的に理解・分析することができる
数量的・統計的データを正確に理解することができる
日本・世界の経済・社会に関する知識を持ち、活用することができる
経済問題について、日本語や英語を用いて、他者の考えを正確に理解し、自らの考えを明確に伝えることができる
世界の多様性、および経済問題・社会問題の多面性を理解し、適切な議論を行うことができる
経済学の学修を通じて、自らの行動を律し、他者と協力しながら、目標を達成できる
社会の発展、人びとの幸福への方途を、経済学を用いて提案することができる
■授業計画・内容
回数 内容
1回目 講義内容
授業の進め方.
事前事後
学習の内容など
なし
2回目 講義内容
混合経済における公共部門
われわれの社会は混合経済である。民間部門だけで動いているわけではなく、必ず公共部門も存在している。
事前事後
学習の内容など
スティグリッツのテキスト第1章
パワーポイントの動画を見て、予習をしておく。
3回目 講義内容
厚生経済学
 公共経済学は、厚生経済学を父として財政学を母として生まれた学問と言われている。その厚生経済学を簡単に見ることにする。市場経済の基本を示している、厚生経済学の基本定理について触れることにする。
事前事後
学習の内容など
スティグリッツのテキスト第3章
パワーポイントの動画を見て、予習をしておく。

4回目 講義内容
市場の失敗
 マンキューで勉強したような、市場における経済活動が原則である。しかし、市場における効率的な資源配分は失敗することがある。そのようなことを市場の失敗と呼んでいる。市場の失敗が発生すると資源の配分に無駄が起こり、国民は様々な面で被害を被ることになり、政府が介入しなければならなくなる。
事前事後
学習の内容など
スティグリッツのテキスト第4章
パワーポイントの動画を見て、予習をしておく。
5回目 講義内容
効率と公平
 ミクロ経済学での基準としては、資源配分における効率性と所得分配における公平性があげられる。この2つの面はトレードオフの関係になっている。
事前事後
学習の内容など
スティグリッツのテキスト第5章
パワーポイントの動画を見て、予習をしておく。

6回目 講義内容
公共財
 公共財について考えることにする。典型的な公共財には、国防サービスや一般道路サービスなどがある。それらの具体例に触れながら、公共財としての役割と、公共事業の関係に関して考えることにする。
事前事後
学習の内容など
スティグリッツのテキスト第6章
マンキューのテキスト第11章
パワーポイントの動画を見て、予習をしておく。
7回目 講義内容
準公共財と価値財
「ミクロ経済学」や「市場と政府」で、教育サービスは重大な外部経済を発生させるということが取り上げられている。重大な外部経済を持つサービスを準公共財と呼んでいる。その考え方をもう一度考えておくことにする。後に外部効果をきちんと取り上げることにする。
事前事後
学習の内容など
プリントを読むこと
パワーポイントの動画を見て、予習をしておく。
8回目 講義内容
公共選択
 市場がうまくいかないようなケースについて勉強した。しかし、政治もうまくいかないような場合がある。財政学においては政治が重要な要因として入ってくるので、政治が絡む部分に関して考える。投票や政治の失敗に関して触れることにする。
事前事後
学習の内容など
スティグリッツのテキスト第7章
マンキューのテキスト第22章
パワーポイントの動画を見て、予習をしておく。

9回目 講義内容
官僚制度
 官僚の問題を取り上げる。官僚は行政として国を運営していく力の1つである。この官僚制度がうまくいかない場合がある。癒着であるとか汚職などが起こっている。官僚制度をどのように考えれば良いのであろうか。
事前事後
学習の内容など
スティグリッツのテキスト第8章
パワーポイントの動画を見て、予習をしておく。
10回目 講義内容
外部性
 わが国では、過去に大きな公害問題を引き起こしている。また最近では地球温暖化の問題など環境問題が取り上げられている。外部効果はそれだけではなく、先の教育などの準公共財としても重要なことである。
事前事後
学習の内容など
スティグリッツのテキスト第9章
マンキューのテキスト第10章
パワーポイントの動画を見て、予習をしておく。

11回目 講義内容
外部性の考え方
 外部効果は市場の失敗を引き起こす。しかし、そのような場合にも政府が介入する必要が無いことが示されている。コースの定理について触れることにする。
事前事後
学習の内容など
スティグリッツのテキスト第9章
マンキューのテキスト第10章
パワーポイントの動画を見て、予習をしておく。

12回目 講義内容
独占
 通常ミクロ理論では完全競争の場合を想定して議論するのようになっている。しかし、完全競争は存在しない。さらに、その対極にある独占も存在しない。しかし、独占の弊害を考えておくことは完全競争を考えるのと同じように価値があるものである。
事前事後
学習の内容など
プリントを読んでくる
パワーポイントの動画を見て、予習をしておく。
13回目 講義内容
独占禁止政策
 前のLectureで独占は存在しないと断定した。しかし、放っておくと独占になってしまうような場合もある。また、寡占においては独占と同様な行動が取られる場合がある。それらは問題を引き起こすのでそうならないような政策がとられる。公正取引委員会がその活動を行っている。
事前事後
学習の内容など
マンキューのテキスト第15章
パワーポイントの動画を見て、予習をしておく。
14回目 講義内容
規制
市場の失敗や社会問題の解決のために、今まで様々な規制がかけられてきた。しかし、自由な市場における活動を目指して規制を緩和しようという動きが進んだ。21世紀に入って世界的に規制緩和の動きが出てきている。
事前事後
学習の内容など
プリントを読んでくる
パワーポイントの動画を見て、予習をしておく。
15回目 講義内容
情報の不確実性
 完全競争市場では完全情報を前提としている。しかし実際には市場において情報は完全では無く、市場の失敗が発生することになる。そこで、情報が完全では無いと市場はどうなるか。中古車市場をもとに考えることに
事前事後
学習の内容など
マンキューのテキスト第22章
パワーポイントの動画を見て、予習をしておく。
16回目 講義内容
質問タイム
 前半の内容について質問に答える
事前事後
学習の内容など
ここまでの範囲の復習をよくしておくこと
17回目 講義内容
中間テスト
事前事後
学習の内容など
15回までの講義内容を復習すること
18回目 講義内容
費用便益分析
 政策を立案するときにはどのような考え方をするのであろうか。かかる費用とその政策の成果を合わせて考えなければならないはずである。しかし、実際の現場ではそのような考え方をするケースは少ない。そこで、その政策を行うことにより発生する便益とはどのように考えれば良いか、費用はどのくらいかかるのかを考えることにする。
事前事後
学習の内容など
スティグリッツのテキスト第11章
パワーポイントの動画を見て、予習をしておく。


19回目 講義内容
誰が租税を負担するのか
 消費税は本当に消費者が全てを負担しているのであろうか。経済学を学んでいるものはそのように断言してはいけない。消費税は消費のパターンを変化させてしまい、別のルートで租税の負担に影響を与えることになる。弾力性が非常に重要になってくる。
事前事後
学習の内容など
スティグリッツのテキスト第18章
パワーポイントの動画を見て、予習をしておく。
20回目 講義内容
ハーバーガー・モデル
 租税の帰着に関する考え方は、前回で講義した部分均衡分析が基本である。しかし、実際の社会は部分均衡ではとらえきれない。最初の一般均衡分析がハーバーガー・モデルであるが、その考え方を簡単に取り上げることにする。
事前事後
学習の内容など
プリントを読んでくる
パワーポイントの動画を見て、予習をしておく。
21回目 講義内容
租税と経済効果:労働供給
 よく、「税金が高いので働きたくなくなった」という話が良く聞かれる。これは本当であろうか。経済学で考えると必ずしもこのようには言えない。どのように考えれば良いのか、ミクロ理論を使って考えることにする。
事前事後
学習の内容など
スティグリッツのテキスト第19章
マンキューのテキスト第18章
パワーポイントの動画を見て、予習をしておく。

22回目 講義内容
租税と経済効果:消費
 消費税には個別消費税と一般消費税がある。これらは消費に対する影響が違っている。個別消費税は消費のパターンにゆがみを与えると考えられ、効率性の面から良くない租税と言われている。その考え方を検討する。
事前事後
学習の内容など
プリントを読んでくる
パワーポイントの動画を見て、予習をしておく。
23回目 講義内容
租税と経済効果:投資
法人税は企業の投資戦略に影響を与えると考えられている。減価償却や資金調達に影響が出てくる。その考え方を検討する。
事前事後
学習の内容など
プリントを読んでくる
パワーポイントの動画を見て、予習をしておく。

24回目 講義内容
最適課税論:物品税
効率性という面で一番良いのはどのような租税かを考える。ここでは資源配分の効率性の面だけから考察を加えるが、死荷重をなるべく少なくすることが求められる。そのような税は公平性の面からは望ましくない。
事前事後
学習の内容など
スティグリッツのテキスト第20章
パワーポイントの動画を見て、予習をしておく。
25回目 講義内容
地価と固定資産税
 固定資産税は地価に対して大きな影響を与える。どのようなメカニズムで影響を与えるのかを考えていく。それに併せて、バブル経済とかケインズの美人コンテストなどの副次的な効果にも触れることにする。
事前事後
学習の内容など
プリントを読んでくる
パワーポイントの動画を見て、予習をしておく。
26回目 講義内容
法人税の二重課税
 法人税と所得税は兄弟の関係にある。したがって、場合によっては二度同じ所得が二度課税されるようなケースが出てくる。利潤にかかる法人税について、なぜ二重課税されるかを考えていく。
事前事後
学習の内容など
プリントを読んでくる
パワーポイントの動画を見て、予習をしておく。

27回目 講義内容
所得分配
 所得分配は、原則として労働市場において行われる。労働市場における需要と供給をもとにして所得の分配の方法を考えることにする。市場における所得分配はある意味では非常に理想的なものである。しかし、市場には限界があり公平な所得分配に失敗することが多々ある。そのような場合、政府が介入して、公平性を取り戻すようにしなければならない。
事前事後
学習の内容など
スティグリッツのテキスト第10章
マンキューのテキスト第20章
パワーポイントの動画を見て、予習をしておく。

28回目 講義内容
脱税
 脱税の経済学を取り上げる。脱税するのはなぜか。脱税のインセンティブを取り上げて、経済学の考え方で脱税を取り上げる。
事前事後
学習の内容など
プリントを読んでくる
パワーポイントの動画を見て、予習をしておく。
29回目 講義内容
タックス・ヘイブン
 現在、世界はグローバル化している。グローバル社会においては、お金だけではなく会社や人間も国境を越えて動くことになる。租税も同様である。様々な手段を通して国境を越えて動く租税を見ていく。
事前事後
学習の内容など
プリントを読んでくる
パワーポイントの動画を見て、予習をしておく。
30回目 講義内容
質問タイム
事前事後
学習の内容など
後半の内容について質問を受ける
■評価・試験方法
種別 割合 評価基準
定期試験
40%
基礎知識を確認し、授業内容の理解度を見る。
中間試験
40%
基礎知識を確認し、授業内容の理解度を見る。
レポート
 
 
実技・作品等
 
 
日常点(小テスト・課題等)
20%
毎回復習の意味で問題をやってもらう
その他
 
 
■評価方法: ABC評価
■教科書
 1.必要に応じてプリントを配布する。

 前の回に資料のプリントを配布する
■参考書
 1.J.E.スティグリッツ『公共経済学 第2版 (上)』藪下史郎訳 東洋経済新報社 2003年 4500円
 2.J.E.スティグリッツ『公共経済学 第2版 (下)』藪下史郎訳 東洋経済新報社 2004年 4300円
 3.N・グレゴリー・マンキュー『マンキュー経済学1 ミクロ編 第2版』足立英之他訳 東洋経済新報社 2005年 4000円
 4.奥野正寛『ミクロ経済学』 東京大学出版会 2008年 3500円
■履修上のアドバイス
・ミクロ経済学の教科書(マンキュー等)で基礎知識を復習し、参考文献などでキーワードを調べ、授業の予習をする。また、パワーポイントの動画を見ることで、予習が分かり易くなる。
・授業内容を確実に理解するためには、毎回定時出席し、授業に集中することが重要である。
・授業ノートと配布プリントで、授業内容を十分に復習する。積極的に参考文献を利用する。
・出された課題や予習を言われたとおりにした学生が良い成績を取っている。
・授業で学んだ内容を自分で説明できるようにまとめておく。専門用語・基本事項を確実に理解する。
・ニュースや文献を積極的に読み、授業で扱った理論が現実の経済とどのように関係するか考える。
・問題は必ず解いて提出すること。
※毎週の授業に必要な学習時間(小テスト、レポート、課題など): 3時間
■アクティブラーニング実施の有無
あり
- ディスカッション、ディベート
- グループワーク
■授業や自主学習支援にICTを活用するかどうかの有無
あり
- ポータルサイト(フォーラム、アンケート)を利用
- クリッカーを利用
■課題(中間試験やレポート等)に対するフィードバックの方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける。
試験やレポート等について、添削、返却をおこなう。
■授業で使用する言語
日本語

 


     直リンクURL:  https://plas.soka.ac.jp/csp/plas/slb.csp?nd=2019&sm=2&mk=11&lc=93021