Language:
2020年度 シラバス情報表示画面 (TA3501)
■科目名
開発と貧困の経済学 (4単位)
開発と貧困の経済学 (4単位) [ECON361]
■教員名
高木 功 (タカギ イサオ)
科目名の後ろに水色で表示しているものは科目ナンバリングです
■開講期 秋期
■テーマ
途上国経済の開発と貧困
■授業概要
本講義では主に二つのテーマについて考察します。一つは「開発途上経済」における経済発展と貧困の解消について,そして二つにはグローバル化によって拡大する世界経済のメカニズムについて理解することです。その上で不均衡な世界の公平化はいかにして可能かを考察します。
私たちの生きるこの世界は苛酷なものです。およそ人類75億の大半はいわゆる「開発(発展)途上地域」に生を受け、亡くなってゆきます。生の物的基礎を保障され、人間として自由と尊厳を確保できる人はむしろ少ないのです。「貧困」の解消は人類的課題であり、また「先進諸国」といわれる地域に住む人々の将来も開発途上諸国問題の解決いかんにかかっています。「グローバリゼーション」の進展下における「富裕」と「貧困」の相互依存関係の構造を明らかにしたとき、「開発途上地域」の諸問題は、実は私たちの課題であることがわかるはずです。
後者については世界経済の現在の成長のメカニズムについて学びます。 今世紀に入り、中国とインドという歴史的大国とラテン・アメリカ諸国という非欧米地域諸国が再び世界の表舞台に踊り出て,世界経済・政治秩序の大きな影響力と役割を持ち始めています。希少な資源と豊富な資金を世界の公平化と繁栄に用いるような循環的メカニズムの形成と多元的な思想と文化的信念を包括し得る新たな世界政治経済秩序がもとめられています。2015年に国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は大きな共通の目標設定とすべての人びと組織、国家のコミットメントを求めています。その可能性についても考察します。
■到達目標
1.世界経済の構造を理解し、問題点を指摘できる。
2.貧困・発展の意味について多元的に説明できる。
3.私達の日常が、世界経済との相互依存関係の中で成立していることを例示でき、説明できる。
4.その上で、自己反省的な自身と行動主体としての自身を認識し、何らかの形で生活に反映できる。
■共通科目または各学部ラーニング・アウトカムズとの関係
経済学を用いて、社会現象を複眼的視点から論理的に理解・分析することができる
数量的・統計的データを正確に理解することができる
日本・世界の経済・社会に関する知識を持ち、活用することができる
経済問題について、日本語や英語を用いて、他者の考えを正確に理解し、自らの考えを明確に伝えることができる
世界の多様性、および経済問題・社会問題の多面性を理解し、適切な議論を行うことができる
経済学の学修を通じて、自らの行動を律し、他者と協力しながら、目標を達成できる
社会の発展、人びとの幸福への方途を、経済学を用いて提案することができる
■授業計画・内容
回数 内容
1回目 講義内容
講義の趣旨・概要と評価方法の説明
0.開発・発展とは:SDGsの時代



事前事後
学習の内容など
2回目 講義内容
1.不均等な世界:富裕と貧困
1-1「先進国」と「開発途上国」
1-2GDP
1-3購買力平価ドル
事前事後
学習の内容など
①国民所得の定義を確認しておくことと
②為替レートとは
③PPPレートとは
3回目 講義内容
2.「開発の時代」の始まりと終わり?:「発展/開発(=Development)」とは
2-1世界をどう見るか
2-2開発/発展の意味
 
事前事後
学習の内容など
①「開発」とは何を意味するのだろう。その指標は。
4回目 講義内容
2-3開発の半世紀(1)戦後復興期:ブレトン・ウッズ体制
事前事後
学習の内容など
①ブレトン・ウッズ体制とは
②世界銀行とは
③IMFとは
5回目 講義内容
 2-4開発の半世紀(2)50年代、60年代
事前事後
学習の内容など
①交易条件とは
②プレビッシュ=シンガー・テーゼとは
③輸入代替工業化とは
④トリックル・ダウンとは
6回目 講義内容
2-5 開発の半世紀(3)70年代の危機と債務問題
事前事後
学習の内容など
①ニクソン・ショック
②第一次・二次石油危機
③経常収支とは
④変動相場制とは
7回目 講義内容
2-6 開発の半世紀(4)80年代「失われた10年」、新自由主義の台頭
2-7開発の半世紀(5)90年代:「開発」の終焉、
(6)2000年代:グローバル経済の拡大と動揺 
事前事後
学習の内容など
①IMF、世銀による「コンディショナリティ」とは
②アジア通貨危機
③2008年の世界金融危機
8回目 講義内容
4.「低開発」「貧困」の原因と背景
4-1貧困の悪循環
事前事後
学習の内容など
①貧困とは
9回目 講義内容
<LTD(話し合い学習)の実施①>
事前事後
学習の内容など
LTDノートを作成し参加
10回目 講義内容
4-2マルサスの罠
4-3偽装失業
事前事後
学習の内容など
①マルサスの「人口論」の内容は?
②限界労働生産力とは
11回目 講義内容
5.貧困の罠からの脱出:農村・都市二部門/農・工二部門モデル
5-1開発へのアプローチの変遷
5-2単線的発展段階論
事前事後
学習の内容など
①ハロッド=ドーマーの基本方程式とは
②ガーシェンクロンの「後発性の利益」とは
12回目 講義内容
5-3ルイスの2部門モデル
5-4ラニス=フェイ2部門モデル
事前事後
学習の内容など
①伝統的賃金(制度的賃金)とは
②「無制限労働供給」とは

☆「ルイスの転換点」とは
13回目 講義内容
5-5リカードの罠
事前事後
学習の内容など
14回目 講義内容
6.「開発」の挫折:インフォーマル部門の拡大、過剰都市化
 6-1都市インフォーマル部門の拡大
事前事後
学習の内容など
①食糧不足点
②食糧価格と都市工業部門の発展の関係は?5-62部門モデルの問題点
③2部門経済モデルの問題点とは
15回目 講義内容
中間試験
事前事後
学習の内容など
①インフォーマル部門とは
16回目 講義内容
6-2トダロ・モデル:3部門モデル
事前事後
学習の内容など
①期待所得の現在価値とは
①最低賃金法とは
17回目 講義内容
 7.開発の改良主義的アプローチ:BHN(人間の基礎的ニーズ)アプローチと参加型アプローチ
 7-1BHNアプローチ
 7-2参加型アプローチ
7-3持続可能な生計アプローチ

事前事後
学習の内容など
①「ニーズ」とは
②「参加」とはだれの参加か
③持続可能な生計アプローチ(sustainable livelihood approach)とは
18回目 講義内容
8.「貧困/発展」概念転換の試み:エンタイトルメント、社会的排除、ケイパビリティ・アプローチ 「ファンクショニングス」とは
8-1所得貧困と貧困線 
事前事後
学習の内容など
①「貧困線」とは
19回目 講義内容
8-2「エンタイトルメント・アプローチ①
事前事後
学習の内容など
①「エンタイトルメント」の意味 
20回目 講義内容
<LTD(話し合い学習)の実施②>
事前事後
学習の内容など
①なぜ飢餓は起きるのか?
21回目 講義内容
8-2 エンタイトルメント・アプローチ②

事前事後
学習の内容など
①なぜ飢餓は起きるのか?
LTDノートを作成し参加
22回目 講義内容
8-3チェンバースの貧困概念
 
事前事後
学習の内容など
①貧困の罠とは
23回目 講義内容
 8-4センのケイパビリティ・アプローチ①
事前事後
学習の内容など
①情報的基礎とは 
②フェティシズム(物神崇拝)とは
③効用とは
24回目 講義内容
8-4センのケイパビリティ・アプローチ②
事前事後
学習の内容など
①センの「自由」とは
25回目 講義内容
9.UNDPによる人間開発アプローチ:「人間開発指標(HDI)」「人間貧困指標(HPI)」
 9-1人間開発指標(HDI)
事前事後
学習の内容など
①なぜハク博士はHDIを構想したのか
 ☆HDIの構成要素は
26回目 講義内容
 9-2人間貧困指数(HPI)
事前事後
学習の内容など
①HPIを構成する要素は
②「人間貧困」とは
27回目 講義内容
<LTD(話し合い学習)の実施③>
事前事後
学習の内容など
LTDノートを作成し参加
28回目 講義内容
10.インクルーシブ・ビジネス
事前事後
学習の内容など
①インクルーシブ・ビジネスとは
②BOPとは 
29回目 講義内容
11.グローバリゼーションとSDGsの意義
事前事後
学習の内容など
①経済の証券化(securitaization)とは
②SDGsとは
30回目 講義内容
総括
事前事後
学習の内容など
■評価・試験方法
種別 割合 評価基準
定期試験
30%
 
中間試験
20%
 
レポート
25%
LTD準備ノート3回
実技・作品等
 
 
日常点(小テスト・課題等)
25%
毎回のキーワード調べ予習とアンケート回答
その他
 
 
備  考
LTDとはLearning through Discussionの略。
話し合い学習法のLTD予習ノートの作り方は講義の中で説明します。
■評価方法: ABC評価
■教科書

 特に指定しないが、配布資料に基き講義を行う。
■参考書
 1.ロバート・チェンバース『開発の思想と行動』 明石書店 2007年
 2.高柳他編著『SDGsを学ぶ:国際開発・協力入門』 法律文化社 2018年
 3.蟹江憲史『持続可能な開発目標とは何か』ミネルヴァ書房 2017年
 4.C.K.プラハラード『ネクスト・マーケット<増補改訂版>』 英治出版 2010年
 5.田中他編著『SDGsと開発協力』学文社 2017年
 6.大塚啓二郎『なぜ貧しい国はなくならないのか』日本経済新聞 2014年
 7.フィリップ・コトラー.ナンシー・リー『ソーシャル・マーケティング:貧困に克つ7つの視点と10の戦略的取り組み』 丸善 2010年
 8.アマルティア・セン著『自由と経済開発』日本経済新聞社、2000年
 9.アマルティア・セン著『貧困の克服』集英社新書 2002年
 10.アマルティア・セン著『貧困と飢饉』岩波書店 2000年
 11.ムハマド・ユヌス『貧困のない世界を創る―ソーシャル・ビジネスと新しい資本主義』 早川書房 2008年
 12.ジェフリー・サックス『地球全体を幸福にする経済学』早川書房 2009年
 13.ジェフリー・サックス 『貧困の終焉』早川書房 2006年
 14.スチュアート・ハート『未来をつくる資本主義』英治出版 2008年
 15.ジェレミー・シーブルク『世界の貧困』青土社 2006年
 16.ダミアン・ミレー、エリック・トウーサン『世界の貧困をなくすための50の質問』 つげ書房新社 2006年
 17.絵所秀紀『開発の政治経済学』 日本評論社 1997年
 18.国連開発計画(UNDP)『人間開発報告』各年版 国際協力出版 
 19.世界銀行編『世界開発報告』各年版 シュプリンガー・フェアクラフト東京
 20.アジット・S・バラ、フレデリック・ラペール共著『グローバル化と社会的排除』昭和堂 2005年
 21.絵所・山崎編著『アマルティア・センの世界―経済学と開発研究の架橋』晃洋書房2004年 
 22.M.トダロ, S.C.スミス共著『トダロとスミスの開発経済学』(第8版)国際協力出版会、2004年
 23.西垣・下村・辻編著『開発援助の経済学』(第3版)有斐閣、2004年 
 24.原洋之介著『アジア型経済システム』中公新書 1555. 2000年
 25.峯陽一著『現代アフリカと開発経済学』日本評論社 1999年
 26.速水佑次郎著『開発経済学―諸国民の貧困と富』創文社 1995年
 27.村上泰亮著『反古典の政治経済学―進歩史観の黄昏(上)』中央公論社 1992年
 28.村上泰亮著『反古典の政治経済学―二十一世紀への序説(下)』中央公論社 1992年
 29.村上泰亮著『反古典の政治経済学要綱―来世紀のための覚書』中央公論社 1994年
 30.原洋之介『開発経済論』 岩波 2002年
 31.エスラワン=コトワル『なぜ貧困はなくならないのか』日本評論社 2000年
 32.アンソニー・アトキンソン『21世紀の不平等』(Inequality: What can be done?) 東洋経済新報社 2015年
■履修上のアドバイス
世界経済、途上国問題、貧困問題に関心のある学生さん、また他の学部の学生さんも大歓迎です。本科目は、映像にて科目ガイダンスが視聴できます。せひ、ご利用下さい。
視聴を希望される学生は、ポータルサイトの「学習支援メニュー」→「科目ガイダンス」からアクセスして下さい。
※毎週の授業に必要な事前事後学習時間(小テスト、レポート、課題など): 6時間
■アクティブラーニング実施の有無
あり
- ディスカッション、ディベート
■授業や自主学習支援にICTを活用するかどうかの有無
あり
- ポータルサイト(フォーラム、アンケート)を利用
- クリッカーを利用
■課題(中間試験やレポート等)に対するフィードバックの方法
授業時間内で講評・解説の時間を設ける。
授業時間に限らず、ポータルシステムの機能や電子メールを利用してフィードバックをおこなう。
試験やレポート等について、添削、返却をおこなう。
■授業で使用する言語
日本語
■履修するために必要な語学スコア基準
特になし。
■担当者のプロフィール
経済学部教授。創価大学6期。専門はアジア経済論、貧困問題、人間主義経済学の基礎。タイ・チュラロンコン大学留学。シンガポール東南アジア研究センター、米国ハーバード大学JFKスクール研究員、フィリピン・デ・ラ・サール大学ユーチェンコ・センター客員研究員。
■定員ならびに履修者選抜方法
特になし。

 


     直リンクURL:  https://plas.soka.ac.jp/csp/plas/slb.csp?nd=2020&sm=2&mk=11&lc=100085